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追悼


 先日、私のゼミに所属している学生が亡くなった。

 卢枢桓(Lu Shuhuan 、ろ・すうかん)君というその学生は、中国山東省威海市の出身で、この春に京都学園大学経済学部に入学、半年で終わる私のゼミに所属したのはこの9月であった。

 成績優秀で何の問題もないと思えたこともあり、彼とは言葉を交わす機会は多くはなかった。印象に残っているのは、ゼミの時間、窓際の席に背筋を伸ばして座っている姿である。黒縁の眼鏡をかけていて、いつも端正で穏やかな表情をしていて、育ちのよさを感じさせた。他のゼミ生のことで、お願いをしたことがあったが、彼は気安く引き受け適切に対処してくれた。

 10月下旬になって、体調が悪いので休学して帰国することにしたという手紙を受け取った。電話をして事情を聞いてみると、先月から体調が悪く、病院に行っても原因がはっきりせず、薬ももらえないので、親の希望もあり、週末の学園祭を手伝ってから、来週帰ることにした、という。急な帰国だが、留学生の友人たちが手伝ってくれるので大丈夫だ、とも。

 病気が治れば来春には復学すると言っていたが、電話口の印象では、彼は自分の病状に楽観しているようではなかった。電話をきって、彼と話すのはこれが最後なのではないかと悪い予感がしたが、それでも来春には会えるかもしれないとも思っていた。だが、結局最後になった。

 以下は、人づてに聞いた話と、地元の新聞(「威海新聞」)のweb版の記事などによる。細部は間違っているかもしれない。

 帰国後、入院した彼の病状は俄に悪化し、大量の輸血が必要となったという。病因はリンパ腫(私は違うルートからは違う病名も聞いたが、いずれにせよがんであったようだ)。知人らや新聞などによる呼びかけがあって、地元の学生たちを中心に多くの市民が輸血に応じ、その人数は350人以上になったという。

 治療費が多額になることを知った、京都学園大学の留学生たちが12月1日から学内で募金を募り、1週間ほどで期待以上の募金が集まり、送金の準備をしていたそうだ。

 しかし、12月9日未明、卢枢桓君は亡くなった。体調の異変があってからわずか3ヶ月、まだ22才であった。
 
 若くして亡くなった人の、家族や友人たちの嘆きがどれほどのものか、私も多少は想像できるつもりである。その想像をここで書こうとは思わないが、少なくとも、亡くなる前、異郷の地でどんな生活をしていたのか、どんな様子であったか、知りたいと思うのではないだろうかと思う。それで、ゼミ担当者としては何もできなかったけれど、卢君についての断片的な記憶を書き記してみた。

 振り返れば、「前途有望な好青年」という言葉ばかりが思い浮かぶ。その最後の日々が、多くの友人や市民、そして家族に見守られたものであったというのは、多少の慰めになるのかもしれない。





 
by kohkawata | 2011-12-31 12:29 | Comments(0)

はじめに

  「東方文藝私記」と題してブログを始めてみようと思う。東方とは中国語で東洋のことで、私の関心は主に中国と日本にある。「文藝」といってみたが、いわゆる文芸だけに限るわけではなく、それを中心としながら文化全般のこととしよう。

 私は、中国と日本の文化についての研究を専門としているが、このブログでは論文には直接にはつながりそうにない話題についていろいろ書いていこうと思う。以前に試作的にブログを書いてみたが、テーマが漠然としていたせいか、なんとなく続けられそうになく頓挫した。今回は、一応「東方文藝」と限定して再開してみたいが、しかしまあ要するに、おもしろかった本や映画の感想文みたいなものを気が向いたときに書いていくことになるだろう。

 新しい情報なり共感なりを読む人が得てくれたら幸いである。
by kohkawata | 2009-12-17 19:25 | Comments(0)